NICHIBUN
日本語日本文学科 特集ページ
日本語日本文学科ではどんな学びが得られるの?
魅力的な「演習」の一部を、ニチブン生が紹介します!
気になる卒業論文テーマ一覧や、学外活動レポートも。
EXERCISE ニチブンの「演習」
日本語日本文学科では、1年次から身に付けていく日本語学、日本文学、日本語教育、関連分野の知識を生かし、2年次からはその発展として「演習」を行います。
「演習」には、主に日本語学演習、日本文学演習、日本語教育演習、それらを複合した複合演習があり、
いずれも知識の応用と思考・判断、資料作成と発表の経験を積み重ねることで、文章を正確に読解しまとめる力と、自らの考えを精緻かつ効果的に伝える表現力を養います。
ここでは、「日本語教育演習」と「近世文学演習」を取り上げて紹介します!
日本語教育演習
日本語教育演習では、国内外で実際に行われている日本語教室や日本語の授業に参加し、実習を行います。
昨年度の実習報告書や授業動画、実際に実習に参加した学生の説明等から、自分の今年度の実習先を決定します。2年次学生は地域の日本語教室である「おるがったキッズ」「オンラインにほんごおしゃべり会」から、3,4年次学生は祥明大学(韓国)、致理科技大学(台湾)、ブラウィジャヤ大学(インドネシア)、熊本県立大学の留学生を対象とした日本語の授業、の中から、自分が参加したい実習を選びます。
2年次学生はさっそく5月から活動がスタートします。外国にルーツを持つ子どもたちを対象とした「おるがったキッズ」では、絵本を使った活動や、季節に合わせた工作活動などを行います。毎回の授業で活動案を持ち寄り、検討、修正し、活動後には振り返りを行います。地域の日本語学習者を対象とした「オンラインにほんごおしゃべり会」では、日本語母語話者としておしゃべり会に参加するだけでなく、ファシリテーターとして学習者の方の発話を引き出したり、進行役としておしゃべり会のトピックに合わせた日本文化や関連語彙の紹介を行なったりします。
また、活動計画を立てるうえで参考にするため、本学で実際に開講されている日本語の授業を見学します。現役の先生方の授業は進行方法や教具、学習者とのやりとりなど随所に見どころがあり、多くの学びを得ることが出来ます。
3,4年次学生は、夏休みまでの間に自身の授業計画を立て、教案を作成します。先方の先生方との連絡を通して、授業で扱う教材や、学習者のレベル、教室環境を確認し、授業内容と合わせて、授業内の語彙のレベルコントロールや、時間配分、使用する教具、学習者の発話量などが適切かどうかを同じ実習団のメンバーと検討します。
同時に実習日程の調整や、海外で実習を行う学生はパスポートや海外保険の申請など、実習を行うために必要な手続きもメンバーで分担して行います。
夏休みが明け、後期に入ると、実際の授業を想定した模擬授業を行います。演習に参加する学生を学習者に見立て、本番で使用する教案、教材、教具を使用して授業を行い、他の学生のフィードバックを受けて、教案の改善を繰り返します。話すスピードや声量、時間配分、教具の文字表記や使用するイラストなど、実際に授業をしてみることで多くの改善点を見つけることができます。また、普段は別々で活動することの多い他の実習団のメンバーからも意見やアイデアをもらえるいい機会でもあります。
いよいよ実習先に向けて出発します。慣れない海外での活動は、常に想定外のトラブルがつきまといますが現地の方や先方の先生など多くの方々がサポートをしてくださいます。実習中は授業外でも交流会などを通して、現地の学生と交流を行うことができ、一緒に食事をしたり観光に行ったりすることができます。実習経験者からは、「授業では、これまでの準備や練習が活かせるかどうか緊張しましたが、学生の皆さんがとてもあたたかく、フィードバックとしてたくさんのコメントを頂けることがとても嬉しかった。もちろん、反省点も多くあり、この機会だけでなく、次の実習や、来年度以降の活動につながるものとなりました。」という声も届いています。
実習終了後は、実習報告書を作成します。来年度の実習生の参考になるように、教案、教具だけでなく、日程やかかった費用、来年実習人参加する学生へのアドバイスなど、実習に関する様々なことを取りまとめて報告します。
この演習に参加することの一番大きな利点は、これまで学習してきたことを使って実際に活動することが出来る点です。実際の活動を通して、より知識が身に付いたり、自分に不足しているものが見つかったり、就職や進路選択のきっかけになったりと、日本語教師を目指す人にとってもそうでない人にとっても、とても良い経験になります。私は、「おるがったキッズ」、「オンラインにほんごおしゃべり会」、台湾致理科技大学の3つの実習に参加しましたが、「おるがったキッズ」や「オンラインにほんごおしゃべり会」で何度も何度も教案を作って活動をしていたことが、台湾での実習で教案を作ったり、交流会を企画したりする際の抵抗感を減らしてくれました。台湾での実習では、海外での生活自体が経験のないことだったので、食文化や交通、日本とは違う生活のルールなど授業活動の他にも多くの学びを得ることができました。はじめはうまくいかないこともありますが、他の学生と協力することで、少しずつコツがつかめたり、トラブルを乗り越えたりすることができます。もし少しでも興味を持ったのであれば、是非皆さんも演習に参加してみてください。
作成:文学部日本語日本文学科4年 井口三佳
※このレポートは、2024年度に作成したものです。
近世文学演習
近世文学演習について紹介します。本演習では、『西鶴諸国はなし』(井原西鶴著、貞享2年〈1685〉刊/テキストは、野田寿雄校註の笠間書院版を使用)という浮世草子を扱いました。浮世草子とは、江戸時代前期当時の世相・風俗を何くれとなく取り上げて描いた娯楽的な小説です。受講する学生は一話ずつ担当を受け持ちます。学生は担当箇所について調べ、最終的に自分なりの考察をすることを演習の目的としています。
発表資料を作るにあたって、まず物語が書かれた時代の書物を写真撮影した「影印本」を確認する所から始めます。「影印本」は、当時の絵や文字をそのまま参照することができ、複製による誤植や書き換えの恐れが無いため、専ら研究用の資料として用いられています。次に、本文に登場する各語について、『日本国語大辞典』(小学館)や『角川古語大辞典』(角川書店)をはじめとした様々な辞書を用いて、本文においてどのような意味で使用されているのかを調べます。また、現代語訳をする際には、注釈書などを参考にしつつも、辞書で調べた情報を使い、なるべく逐語訳をすることを心がけます。
現代語訳が終わったら、『西鶴事典』(おうふう)を用いて、先行研究論文を探し、そこで指摘されている、各話の背景になっている典拠・原話に当たって担当箇所との比較を行います。その上で西鶴がどのような工夫を施したのか、その意味・効果を明らかにすることを目指すのです。資料については、研究室や資料室、他大学にしか所蔵されていないものもあるため、必要に応じて足を運んだり、取り寄せを依頼したりすることが求められます。
最後に、これまでの過程を踏まえた上で、自分が関心を持った点についての考察を行います。考察を終えると発表資料は完成です。発表資料を作る際には、フォントの統一ができているか、誤字脱字がないか、出典の明記はされているかなどの確認を徹底し、読み手の側に立った丁寧な資料作りをすることが大切です。
担当箇所の発表後は、受講している学生や先生との質疑応答が行われます。『西鶴諸国はなし』では、成立した時代の影響を受け、中世的な価値観と近世的な価値観の融合というものが見られます。その中でも、仏教的な価値観からの脱却というものは度々テーマとして登場し、その解釈についてそれぞれ意見が分かれることもあります。考察については、「正解」というものがないため、それまでに見つけた根拠を用いて意見をぶつけ合い、そこでそれまでに指摘のない新たな発見がなされることもあります。
近世文学は、話としても滑稽で面白いものが多く、他の古典文学よりも身近に感じることができるため、文学に対する造詣が深くない人でも楽しめる演習だと思います。
紹介:日本語日本文学科4年 浅田 紳助
※このレポートは、2024年度に作成したものです。
THESES ニチブンの「卒業論文」
日本語日本文学科の令和2年度卒業生の卒業論文テーマ一覧です。
卒業論文ってどんなことを書くんだろう?と疑問に思ったことはありませんか?
多くのニチブン生が、日本語学や日本文学、日本語教育に関連するテーマで卒業論文を書きます。
研究対象・題目 | 研究室 |
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「楽しい先生」についての一考察 - 形容詞の連体修飾用法に関する容認性判断調査を通して - | 秋葉 |
コロナ禍における熊本県の技能実習生監理団体が抱える課題について | 秋葉 |
文学作品の内容による心理的影響の差異 | 石井 |
アサーションにおける話し手の終助詞「ね」の使用による印象形成 | 石井 |
山東京伝『化物和本草』考 -陳列される化物- | 大島 |
明治期における<加藤清正>像 | 大島 |
南阿蘇村方言のイントネーションについて~熊本市方言と比較して~ | 小川 |
寺院の名称に使用される漢字について | 小川 |
女子大学生の自称詞の使用について | 小川 |
熊本市とその周辺における若年層の「バイ」と「タイ」の使用について | 小川 |
熊本県における準体助詞「ツ」と「ト」の用法 | 小川 |
"福岡市方言において最も伝えたい内容をマークする方法について-「トッテ」を使用した文の場合-" | 小川 |
ゲーム・映画における吹き替え翻訳字幕について | 小川 |
久米正雄「受験生の手記」における<圧迫> -健吉の<道>と自死- | 五島 |
「魔性の子」において「故国喪失者」が示すもの | 五島 |
「女生徒」太宰治 「女生徒」における<少女形成> -「有明淑の日記」との比較- | 五島 |
夢野久作『少女地獄』 | 五島 |
遠藤周作文学における森田ミツに関する一考察 | 五島 |
寺山修司「毛皮のマリー」における母と性 | 五島 |
梶井基次郎「檸檬」 -構成するテーマを通して- | 五島 |
織田作之助「黒い顔」 | 五島 |
坂口安吾「真珠」における「あなた方」-その特質と超人性- | 五島 |
穂村弘『手紙魔まみ・夏の引っ越し(ウサギ連れ)』 -まみという妖精- | 五島 |
「芥川の人生とキリスト教との関わり」 | 五島 |
宮澤賢治「よだかの星」 | 五島 |
江戸川乱歩作品における「この世のほかの恋」をする男たち | 五島 |
"宮澤賢治「二十六夜」における穂吉のあり方について-「よだかの星」との比較による、救済の相違- | 五島 |
中島敦「山月記」 | 五島 |
「鬼」の正体と変遷 | 鈴木 |
『宇治拾遺物語』編者の批評精神 | 鈴木 |
『海人の刈藻』における<母性>-物語を平和へと導く存在- | 中井 |
源氏物語 薫と宇治の三姉妹について | 中井 |
氏忠と薫の対照性 -『松浦宮物語』の『源氏物語』反転摂取の様相- | 中井 |
「源氏物語」の紫の上について | 中井 |
≪誤解≫する柏木と六条院権力体制の崩壊 | 中井 |
オノマトペと動詞の実相 | 半藤 |
「まで」は副助詞か | 半藤 |
程度を表す副詞「ひどく」と「えらく」の違い | 半藤 |
森見登美彦作品における一人称代名詞の役割について | 半藤 |
稲葉家旧蔵の古本節用集について | 米谷 |
方向指示の「ゴトク」再考 - 中近世九州資料の方言 - | 米谷 |
近世における「サトル」「トドム」「ヨロコブ」の漢字表記について | 米谷 |
「極度」の語誌 -近世後期から明治・大正期を中心に- | 米谷 |
EXTRAMURAL ACTIVITY ニチブンの「学外活動」
文学部は、研究室にこもって書物を読むことばかり・・・そんなイメージはありませんか?
実は、ニチブンは学外活動も豊富なんです!
熊本県立大学・福岡女子大学 合同古典籍研修会
2018年8月30日に、長崎県島原市の肥前松平文庫(島原図書館)において、古典籍研修会を行いました。同文庫は、古典文学作品の善本の所蔵では九州屈指。しかも、研究を志す者には広く閲覧が許されている有り難い機関です。国文学研究資料館(立川市)の委託を受けて、両校の教員が長く書誌調査を重ねてきました。その縁もあって、同資料館の後援のもと、両校の学生・教員が一堂に会しての研修会を開催する運びとなったのです。
午前中は島原松平家の菩提寺である本光寺の常磐歴史資料館を見学し、松平家の由緒と歴史を学びました。午後は研修会。プログラムは次の通りです。
- 1.古典籍のかたち 入口敦志(国文学研究資料館・教授)
- 2.松平文庫本『夜寝覚』 安武祐梨(熊本県立大学・大学院生)
- 3.連歌と連歌懐紙 鈴木元(熊本県立大学・教授)
- 4.松平文庫と中世和歌 今井明(福岡女子大学・教授)
- 5.質疑・原本閲覧
研修会は松平文庫関係者の出席も得て30名を越える盛会で、成果報告・質疑とも熱のこもった内容となりました。
本学の学生スタッフ4名(大学院生1名・学部生3名)は、前日から島原入りし、成果報告のための画像撮影や資料作成に携わった他、受付や会場の設営等に活躍しました。
八代松井家菩提寺春光寺蔵書調査
平成26年から八代市立博物館未来の森ミュージアムのご協力により、八代松井家菩提寺春光寺蔵書の調査にとりかかりました。
埃と虫食いで、なかなか大変な作業でした。
その他にも、熊本県立図書館の郷土資料悉皆調査などを行いました。